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偏光(3)


横浜国立大学大学院工学研究院 教授 栗田 進

3.1 光波を数式で表す
 物質中を伝わる光波を数式で表す方法は電磁気学の書物にいろいろと説明されているので、ここでは偏光を記述するのに必要な範囲でまとめておく。光は電磁波であり、電場、磁場が振動しながら伝わる波である。物質による光の吸収は主に電場が寄与するので、電場の波動性を扱うことにする。磁場も場の方向が電場と直角であることを除けば全く同じように記述される。
 単色の直線偏光は進行方向(ここでは 方向とする)に垂直な電場の変位によって伝搬し、変位の大きさは時刻 と進行方向の位置 に対して余弦関数(あるいは正弦関数)的に変わる。その様子を図3.1に示す。この様な電場がそのままの形で 方向に平行移動していくのが単色の波で、位置 z が同じ所では電場は xy 平面内のどの位置でも同じ値をとるので、この様な波を平面波、あるいは光を扱う場合は平行光と呼ぶ。電場ベクトルの大きさは
                      (3.1)
と表せる。ここで、振幅、余弦関数の引数位相である。 波数と呼ばれ、波長と次の関係がある。
                                  (3.2)

角周波数で、周波数波の周期とは次の関係がある。
                              (3.3)
は基準の時間、空間の点での位相を表し、初期位相と呼ばれる。
なお、




図 3.1 電場ベクトルの伝搬



光の強度は振幅の自乗に比例する。実際の光、例えば、黄色の光の波長は約500nm、すなわち、500x10-9mである。光は1秒間に約3X108m進むので、黄色い光の振動数は約6x1014Hzである。ここで光速C= の関係を使った。
 
(3.1)式に戻ろう。この式は時刻 t、位置 z と共に電場が振動しながら伝搬する様子を数学的に表したものである。ある時刻 t のとき、ある位置 z で波が最大値 をとったとする。
僅かな時刻が経過したとき、最大値の位置が だけ移動したとすると、最大値を取る位相は同じだから
          
となり、の関係が成り立つ。すなわち、

          

となる。時間が経過するときは正であるから、も正である。従て、波は時間の経過と共に正の方向に動き、その速度は

                           (3.4)

となる。この議論から明らかなように、

                     (3.5)

と表される波も正の方向へ同じ速度で進む進行波を表していることが分かる。波の表現として式(3.1)、あるいは式(3.5)のどちらを使っても良い。ここではの係数を正の符号にとる(3.1)を用いることにする。同様にして、例えば、

                     (3.6)

で表される波は、時間の経過と共に z の負の方向に進む波であることが分かる。


3.2 偏光状態
 ある瞬間における単色光の電場を図示したのが図3.2である。光線の中心線を基点として各々の位置での電場ベクトルを描き、そのベクトルの先端をつなぎ合わせてできた曲線が描いてある。電場がある特定の方向でのみ振動する光を直線偏光(図3.2a)、電場ベクトルが螺旋になって伝搬する円偏光(図3.2b,c)、図には示されていないが、電場のベクトルの先端の軌跡を xy 平面上に投影したとき楕円になる楕円偏光がある。
 光は横波であるので、進行方向に垂直な方向で電場は振動する。その電場ベクトルは xy 平面内にあるので、振動を互いに独立な x 成分と y 成分に分解できる。その電場成分を とすると,

                       (3.7a)

                       (3.7b)




となる。横波なので は0である。なお、z 軸の原点、あるいは時間の原点を適当にとればいつでもにすることができる。このことから初期位相で重要なのは位相差である。
ここでは ととることにする。

                 (3.8a)

              
(3.8b)

直線偏光
 X成分とy成分が同じ位相であるとき、すなわち、であるとき、
      
となり、電場はx軸から角方位角という)傾いた直線上を振動する。通常、振幅は正にとるからである。のときは同じく直線偏光になるが、傾きはの範囲にある。
 同位相、あるいはだけずれた2つの直線偏光を合成すると のベクトル和の方向を向いた新しい直線偏光が得られる。位相が等しい多くの光波があるときにはそれらを2つずつ合成し、それを繰り返していけば最後には1つの直線偏光の光波にまとめることができる。また、この合成の逆を考えると、直線偏光はいつでも2つの直線偏光に分解できることになる。更に、ベクトルの分解の仕方は無限にあるから、直線偏光に分解する仕方も無限にある。どのように分解するかは、を持つ光波の効果を考え、それぞれの目的に合うように分解すればよい。

円偏光
 次に、且つ、位相差が-/2だけずれている場合を考えてみよう。(3.8)は
                      (3.9a)
         (3.9b)
となる。この2つの直線偏光の合成は図3.2bに描かれている円偏光になる。それは次のようにして示すことができる。(3.9)から
      
となり、合成ベクトルが常に半径aの円周上にあることがわかる。さらに、
         
方位角は、zが増加するにつれて、増える。また、zの位置に止まって観察すると、方位角が角速度で減少しているが、これは合成された電場ベクトルがz方向遠方から見ると時計回り(右回り)に回転していることを意味している。この様な光波を右回り円偏光といい、数学的な表記は(3.9)式で与えられる。位相差/2の場合には、光を迎える遠方から見ると、合成ベクトルは反時計回り(左回り)に回転する。この偏光を左回り円偏光という(図3.2c)。
 互いに直交し、振幅が等しく、位相が/2だけずれている2つの直線偏光を合成すると円偏光が得られることになる。逆に1つの円偏光は互いに直交し、振幅が等しく、位相が/2だけずれている2つの直線偏光に分解することができる。

楕円偏光
 式(3.8)で位相差、振幅が特別な値をとらないときには合成された光波は楕円偏光になる。
(図3.3)。(3.8)でを消去すると
         (3.10)
となるので、合成された電気ベクトルは楕円上を回転することになる。楕円の方位角は位相差、振幅の比で決まり、次式で与えられる。


                              (3.11)
直線は楕円の短軸の大きさが0に近づいた極限の場合として、また、円は楕円の短軸と長軸が等しくなった場合で、いずれも楕円の一部と見なすことができる。

 結果をまとめると、式(3.8)で表される光波は一般には楕円偏光になり、(3.11)で与えられる方位角をとる。
  (1)、右回りの楕円偏光
  (2)、直線偏光
  (3)、左回りの楕円偏光
  (4)、直線偏光
の場合には(3.11)から方位角は常に45°か、-45°である(除く円偏光)。
  (1)、右回りの円偏光、、左回りの円偏光
  (2)その他の場合は、(1)〜(4)と同じである。
の場合に、位相差によって偏光状態が変化する様子を図3.4に示してある。
位相差、振幅比がx成分、y成分の間で確定している場合について述べてきた。この様な光波を完全に偏っている光波という直線偏光、円偏光、楕円偏光は全て完全偏光である。
太陽光や白熱電球からの光は位相も振幅も時間的に全く乱雑に変化しているので、全ての偏光状態が同じ確立で現れ、偏光特性を示さない。自然光は無偏光である。窓ガラスでの反射光や、青空などの散乱光には偏りを持った成分が含まれている。この様な光は部分偏光しているという。


図3.4 による偏光状態の変化。ただし、


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