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ガラスの歪と歪の測定方法(9)

千葉工業大学 付属研究所 教授 岸井 貫


2つの偏光板をその軸が直交するように並べて貼り合せたものを使うと、このことが明瞭に解る。
A フロート法板ガラスの場合
フロート法板ガラスでは、製造時に錫浴に接していた面が高屈折率層になっている。この層は厚さが数ミクロンないし十数ミクロンであるが、光通信ファイバーの場合と同じ理由で、光を閉じ込めて巨視的な距離の間を伝える、という働きがある(図48)。
この場合に、光はやはり光通信ファイバーの 場合と同じく、離散的な「モード(光波の振動・伝播の形態)」を作って伝わる。高屈折率の層が比較的薄ければモードの数は1であり、高屈折率層の厚さとともにモードの数は増える。
フロートガラスが強化されていて表面が複屈折性になっていると、表面を伝わる光のうち、表面に平行に振動する成分と、表面に垂直に振動する成分とに対して、表面層内の深さ─屈折率関係が違い、互いに平行移動した関係にある(図49b)。
表面層内を伝わる光は高屈折率のプリズムを表面に置くことで取り出すことができ、表面層内を伝わる光のモードはそれぞれ望遠鏡の対物レンズの焦点面に集められてモードの数だけの光の像を作る。
このような現象が、表面に平行に振動する光と、表面に垂直に振動する光とで、それぞれ独立に起こる。
偏光板を使うことで、それぞれの波が作る光像群を互いに分離できる(図50)。
一方が他方に較べてどれだけ平行移動しているかが表面応力に比例する。
この方法はJIS規格R3222「倍強化ガラス」に採用されている。


B 表面に導光効果があるガラス製品
多くのガラス製品は溶けたガラスの塊を引き延ばしたり、吹き拡げたり、押し延ばしたりして作られる。
ガラス中に屈折率の不均一があると、成形作業中に表面に平行な薄い層の重なりとなって配列する。普通は不均一の程度が小さいので、不均一による応力は小さく無視できる。
このような屈折率の不均一の配列があると、屈折率の極大の部分が、光通信ファイバーと同じ理由で、光を極大に沿って伝える性質がある(図51)。
このようなガラス製品の例は、瓶ガラス、型押しで作られたガラス、手吹き法で作られたガラス、フロート法以外の方法で作られた板ガラス、など、多種類ある。
これらのガラス器の表面には、光を表面層内に入れ、屈折率極大に沿って走らせることができ、また表面に高屈折率プリズムを当てることで取り出すことができる。
取り出された光を望遠鏡で観察すると、対物レンズの焦点面には、表面層内にある屈折率の極大に応じて1つまたは複数現れる。
もしもガラス器が強化されていると、前述のような光像が2つ現れ、これらの間の位置の差が表面応力に対応する。
このような製品の表面が光を伝える性質は、フロート法板ガラスや次節で述べる化学強化ガラスに較べると弱いため、測定する光はレーザー光のように強く集中したビームであることが必要である。



2. 化学強化ガラスの表面応力測定
ガラス中のナトリウムイオン←→塩浴中のカリウムイオンの交換によって作られた強化ガラスは、(図52)表面層に強い圧縮力が作り込まれるが、この層は同時に高屈折率層であり、フロートガラスの場合と同じく光を閉じこめて伝える。
これら2つのガラスの間の違いは、表面付近の深さ─屈折率関係は、熱強化フロートガラスでは2つの光の間では近似的に平行移動の関係にあるが、化学強化ガラスでは表面層だけに強い応力が集中しているため、2つの光の間で平行移動の関係がないということである(図53)。
これに対応して、化学強化ガラスでは2つの光(表面に垂直に振動する光と表面に平行に振動する光)がそれぞれ作る光像群の間に相似関係がない(図54)。
図54(a)は2つの光により作られた光の像が重なって見えている状況を示し、(b)は偏光板を使って2つの光像を分離し並列させた状況を示す。
それぞれの光像の中の暗い縞の配列から、表面層内のそれぞれの光の屈折率分布を推定することができる(図55)。
2つの光の間の表面の屈折率の差は表面の応力による複屈折であるから、表面の応力を計算できる。
また、複屈折率が高まっている部分はカリウムイオンが進入して圧縮応力を発生させている部分で、「圧縮応力層」に他ならないから、圧縮応力層の厚さも同時に計算できる。
化学強化ガラスでは、強化層の厚さも傷つきによる強度低下に対する抵抗性を表すとして品質管理で重要視されるが、これは光像群の中の光像の数に比例することが計算で知られているから、表面応力・応力層厚さの双方が求められて、大変好都合である。
圧縮応力層の厚さが特に厚いガラスの光像の一例を図56に揚げる。


以上
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