ガラスの歪と歪の測定方法(10)
千葉工業大学 付属研究所 教授 岸井 貫
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| 光路差は歪検査器・各種補正器(コンペンセイター)類・光弾性装置を使って観察できる。 |
| 水晶楔を組み込んだバビネ補正器を使って鉛ガラス管(強化されていない)の残留ひずみを観察すると、図2に例示したように見える。また光路差を管壁の厚さの中で場所の関数として測り、グラフに描くことができるので、これを「光路差曲線」と呼んでおく。 |
| 図2に例示したようなバビネ補正器の視野の曲線は、光路差曲線のおおよその形を表している。 |
| 光路差曲線には応力分布と光の経路長さとがたたみ込まれている。 |
| たたみ込みをほどいて応力分布だけを取り出すことが最終目的であるが、これは一般には解析的にはできない。 |
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| △光路差曲線の定性的解釈 |
| 偏光の経路が図3(b)の経路1のような管壁外側から経路6のように内表面側へ移るのに伴い、光路差が次のように変わる。 |
| 経路1はガラス壁中での長さが零、光路差も零。 |
| 経路1→経路2の変化では、圧縮応力が強い部分で経路長さが急増し、光路差も圧縮側へ急激に立ち上がる。 |
| 経路3→経路4の変化では圧縮応力層内の長さ変化は少ないが、他方で張力層内の長さが急増するから、光路差は張力側へ向け変化する。 |
| 同様な理由で、経路5→経路6の変化では光路差は圧縮応力側へ向かう。 |
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| △光路差曲線のシュミレーション |
| @計算の前提 |
| 観察結果をシュミレーションするための計算に次の仮定を置く。 |
| a.観察される光弾性効果は軸方向応力によるものである(半径方向・切線方向の応力が及ぼす効果は、光の経路に沿って積分されると零になる。これは軸方向に長い弾性体で一般に成立効果は、光の経路に沿って積分されると零になる。これは軸方向に長い弾性体で一般に成立する事である。また壁の中では半径方向応力の絶対値が小さい)。 |
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| b.管壁内の軸方向応力の分布は、管軸に平行な軸を持つ放物線形である(熱伝導論から導かれる近似則)。 |
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| c.前記の放物線の軸は管壁の厚さ内にある。内外壁のうち冷却が弱かった方の近くにある(軸が管壁外へ出るのは一方の面から加熱、他方から冷却された場合であるから、本稿では考えられない)。 |
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| d.壁の厚さ方向に軸方向応力を積分すると零である(近似的な仮定である。零でない部分は実際にはひずみ検査器で応力がある場所として検出される)。 |
| これらの前提のうちのいくつかは、口の上端では成立しない。以下の議論ではこの部分を除外する。 |
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| A定式化と計算(図4) |
| ガラス器壁の厚さを2・aとする。器壁中央の曲率半径をRとする。器壁の中央からZの距離の経路を通る光について考える。 |
| 放物線の軸が器壁中央からb・aの距離にある(-1<b <+1)とする。 |
| 器壁厚さの中央から測った厚さ方向座標をxとすると、応力の分布は、 |
《応力=A1・(x-b・a) +C》・・・・・式(1) |
| A1、Cは定数厚さ方向の応力の積分が零という条件から |
《C=(-1)・(1/3+b )・A1・a 》・・・・・式(2) |
| 光の経路が外周と交わる2点が曲率中心に張る角を2・θとすると |
《cosθ=(R+Z)/(R+a)=1-(a-Z)/(R+a)》《θ )》(∵θ《1) |
| 光の経路上で角座標がθである点のx座標zは |
《z={(R+Z)/cosθ}-R≒(1/2)・θ ・(Z+R)+Z》 |
| この点の応力は |
《A1・(z-b・a) +C》・・・・・(3) |
| 光の経路に沿う長さをsとして |
| 《ds≒R・θ》 |
近似する。式(3)をほどいて応力をZとθの関数として表現し、θについて積分する。すなわち
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応力(Z,θ)・R・dθ=KRS(Z) |
| を求める。 |
| 関数KRS(Z)に光弾性常数を掛けると光路差曲線になる。 |
| 三角関数を多項式で近似したため、積分計算は多項式の計算であり、容易にプログラムできる。 |
| 放物線の軸が内表面にある場合(b=-1)から外表面にある場合(b=+1)までbをパラメーターとし、R=20mm,a=1mmとして計算した応力分布と光路差曲線の群を図5に揚げる。 |
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| △観察と推論 |
| @定性的結論 |
| 計算結果(図5)を検討すると、光路差曲線の形の観察からすぐに次の結論が得られることがわかる。 |
| a.器壁の外表面から内部への曲線の立ち上る方向は、外表面の力の性質と対応する。圧縮側へ立ち上るなら外表面の応力は圧縮力である。張力側へ立ち上がるなら外表面に張力が露出している。 |
| b.内表面付近から内表面へ向けての曲率の変化の向きについても同じことがいえる。 |
| c.従って内表面付近に光路差曲線の極値がない時は、内表面の応力が零に近いか張力であるかであり、強化処理時に内表面の冷却が効かなかったことを示す。 |
| 以上の結論を利用すると、内外表面での張力部露出の有無を迅速に判断できる。 |
| 一例として図2と図5中の光路差曲線とを対照して、この鉛ガラス管ではbが-1に近くて外面
に圧縮力、内表面に張力が現れていたことが判明する。 |
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| A定量的判断 |
| 応力分布を定量的に求めるのは次の手順による。 |
| a.外表面近くの光路差曲線の極値K1と、内表面の値K2を測りそれらの間の比を計算する。 |
| b.前記のこれを図5の光路差曲線群のそれと比べ、該当bを決める。 |
c.A1=1Kg/mm としてbを式(1)、(2)に代入し、光路差曲線を計算する。外表面近くの極値K1'を求める。 |
| d.K1'が実測されたK1に等しくなるようにA1を補正する。 |
| e.bと最終的に得たA1とから、壁厚さ方向の応力分布(内外表面での応力値も含まれる)を計算する。 |
| 内表面付近に光路差曲線の極値K3がある場合には、K1とK3とを測ってほぼ同じ手順に従っても応力分布が得られる。 |
| 以上の手続きをすべてコンピュータで実行することができる(図6)。 |
| R=20mm,a=1mmの場合を例にした、K1とK2をキーボードから入力すると、応力分布と光路差曲線とが描かれ、念のためにK1とK2の値も光路差曲線に記入される。 |
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| △むすび |
| 本稿で述べた計算法を使うと、応力分布を仮定して簡単に光路差曲線を計算することができる。 |
| これを実測と比較して少しの試行錯誤的計算をすれば応力分布を推定できる。 |
| また、光路差曲線からの定性的判断だけでも実用上有用な場合が多い。 |
| △文献 |
| @H.N.Ritland J.Amer.Ceram.Soc. |
| 40 153 (1957) |
| A岸井貫 New Glass Technol. |
| 2 No,2 44 (昭57) |
| 以上 |
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