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ガラスの歪と歪の測定方法(1)

千葉工業大学 付属研究所 教授 岸井 貫


ガラスの歪み(ひずみ)

ガラス製品に「歪み」があると、製品の強度低下や自然破壊の原因になるために、@歪みを除く、A十分小さい値にする、B製品内での分布をコントロールする−等の注意が必要とされます。
事業所によっては「歪み」のかわりに「ストレン」とも呼ばれます。では「歪み」とは何でしょうか?
「歪み」は材料力学でも扱います。しかし、ガラス工業界と材料工学とでは「歪み」の内容が違うため、誤解を招いたり、訳のわからない、不可解な
ものとみなされたりすることがあります。
先ず材料工学の「歪み」を見ましょう。
外から力がかかっていない棒状の材料を考えます。材料は木でも石でも金属でもガラスでも構いません(図1)。

地球上の材料である限り、重力と大気圧とを受けています。これらは外から受ける力(外力)ですが、実用上は無視して良いものとします。
棒を長さ方向に引けば伸びます(図2)。


図のΔLは「伸びの歪み」です。押せば縮みます(図3)。

また一端を固定して他端を軸に直角の方向に押せば曲がります(図4)。

また他端にハンドルを付けて回せば捻れます(図5)。

この伸び・縮み・曲がり・捻れが材料工学で謂う「歪み」です。
ガラス工業界ではこのような「歪み」が問題になることは比較的少ないようです。
その代わりに、外力の有無に関係無しに、製品の内部にある力(引っ張りの力・圧縮の力・捻りの力など)が問題になります。
ガラス製品内にこのような力が働いている状態を「歪みがある・歪みが残っている」と表現します。
ガラス工業で「歪み」が問題になるのは、ガラス器の強度・破壊と関係があるからです。
ガラスは引っ張りの力に対しては弱く、圧縮の力に対しては比較的強いものです。
特に外表面引っ張りの力が働くと、特に割れやすいものですし、また外表面に引っ張りの力が残っていると、外見上は外力が働いていないのに自爆する可能性があります。
逆に外表面に圧縮の力が残っていると、外力でこの力が打ち消されるまでは破壊しません。見かけ上は強度が何倍にも高まったように見えます。
「強化ガラス」はそのようなガラス器です。
このようなガラス製品の場合、力はガラス器全体ではたがいに打ち消しあっているので、外見からは「歪み」があるかどうかの判断もできません( 図5a )し、まして、外力が加わっているように見えません。

歪みが入っていないガラス板(生板)に力を加えて曲げます(図6b)。この場合には外力が働いていて、板の外形が(弾性論で言う意味で)歪んでいることが明白です。



「応力」

ここで「応力」という言葉を説明しておきましょう。
材料工学では、外力が加わって材料が歪み、この時に「歪みに応じて発生する力」が「応力」です。しかしガラス器の場合にこのような機構で発生する力を問題にすることは少ないのです。
従って「応力」は材料内に存在する力を単位面積当りの値で表したもの、と考えておき、また使います。
このように言葉の意味を約束すると、ガラス工業界でいう「歪み」とは、ガラス器内に応力が「存在している・残っている」ことを表現したことになります。
外力がなくても、強化ガラスには強い「歪み」があります(図6a)。
歪みの発生

今、歪みのない(応力が存在しない)ガラス板を考えましょう。
歪みは次のような場合に発生します。
@外力がかかった場合
これは材料力学・弾性論的にいうと、外力によって「歪み」が発生し、それに応じて「応力」が発生した場合です。外力を無くすると歪みも応力も無くなります。
A加熱されて温度が不均一に分布した場合色々な場合があるので、二、三の例を挙げしょう。
a.四角い板の一つの辺部分が他の部分より高くなった場合熱せられた部分の温度が、ガラスが軟化する温度より低いとします(図7)。

熱せられた部分が伸びようとします。他の部分はこの伸びを妨げようとします。
その結果熱せられた部分は辺に平行に圧縮の力、この部分に近接した部分は引っ張りの力が発生します(図7a)。

しかしこれだけの応力の分布では、板を回転する様なトルクが残り、板はいつまでも回転を続けます。
このようなことは物理的に不可能です。実際は他の部分にも応力が誘起されて、回転トルクを打ち消すように変形が起こります。最終的な変形と応力分布は図7bの様になります。

加熱が終わり、長い時間が経って板の温度が均一になると応力は消え、始めのように「歪みのない」状態に戻ります。
温度不均一にともなう「歪み」と応力は一時的なものです。これらは「一時歪み」と呼ばれます。
b.ガラス板の中央部が加熱された場合熱せられた部分の温度が、ガラスが軟化する温度よりは低いとします。
中央部は膨張としますが、周辺は自分の大きさを変えないで保ちたいという傾向になります。
その結果、中央部には一様な(方向によらないで)圧縮の力が発生します
(図8)。
以上


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